これは、太宰治著『道化の華』の中で、葉蔵が放った言葉である。
これは、照れ隠しなのか本音なのか。しかし、この芸術が恥かしいという感覚は、本物の芸術家には必要な素質である。
生活必需品でもないものを、わざわざ作る必要があるのか。単なる自己顕示欲の塊ではないのか。芸術は、いわゆる労働ではない。生活のために働くほうがよほど健全に思えるし、家族のため、お金のためのほうがまだ言い訳がきく。
こういう自問自答で悩まない人は、逆説的であるが、良い作品を作ることは出来ない。
芸術は、恥かしいものだ。しかし、そういう世界でしか輝けない人がいるのも事実だし、何だか説明できない衝動に突き動かされて産み落としたものが、人々の羨望の的になったりするのだ。