野川出版の Blog

ペラゴロ

太宰治著『男女同権』には、“ペラゴロの詩人”という表現がある。
同棲していた女が、悪く言っていたはずの自分の詩の仲間、“ペラゴロの詩人”と通じて、自分を捨てて逃げて行ったという話である。
ペラゴロとは何だろうか? ペラペラしたジゴロだろうか?
家にある古い広辞苑で調べると、
ペラごろ(「オペラごろつき」の意)大正年間、オペラが流行したころ、歌劇女優を追いまわしたり、劇場に出入りしたりした若者たち。
とある。インターネットで見れる辞典でも、だいたい同じような説明である。
「ごろつき」は、今ではポリコレ的にアウトだと思うが、警察用語では「政治活動標ぼうゴロ」というのもあり、現在でも堂々と使われている。
それはそれとして、『男女同権』は、男女同権によって遠慮なく女性の暴力を摘発できるようになるというオチで終わる作品である。
これと併せて、『女類』という作品も読んでみてほしい。『男女同権』と打って変わって、後味の苦い作品である。ここには、女を嘲笑するような小説を書くことを売りにする老作家、笠井氏が登場する。
『男女同権』の語り手も、『女類』の笠井氏も、太宰治自身のカリカチュアなのだろう。