太宰治著『渡り鳥』には、「あなたは?」と聞かれて「まあ、一介のデリッタンティとでも、……」と答えるシーンがある。
英語では “dilettante” の複数形が “dilettanti” であるらしいのだが、「一介の~」と言った場合、数多の dilettanti (複数形)の中の一人という意味になるのだろうか?
手元にある国語辞典には、「ディレッタント」という言葉が載っている。
「デ」なのか「ディ」なのか、「リ」なのか「レ」なのか、「ティ」なのか「ト」なのか、まあそういうことはどうでもいいのかもしれない。
“dilettante” は、芸術愛好家であるが、素人というニュアンスもある。「一介の」と言っているのだから、さらに自虐的な意味合いがあるのだろう。
ルサンチマンとかレゾンデートルみたいな、現代思想界隈のあの独特の言葉遣いが感じられるだけでも面白い。そして、こういう業界には割と細かい縄張りがあり、専門外のことに口を出す人を素人呼ばわり(しかもカタカナで)する風習があったりするのだから、自分からネタにしてしまえば勝ちというような、めんどくさい人たちの集まりでもある。
